厚生労働省年金局国際年金課は、令和5年5月13日に「日・オーストリア社会保障協定」の交渉が実質合意に達したことを発表しました。
現在、日本とオーストリアの両国から相手国に派遣される企業駐在員などにおいて、二重の社会保障制度への加入が義務づけられるなどの問題が生じています。
そこで、両国政府は平成22年(2010年)10月以降、協議を続けてきましたが、ついに「日・オーストリア社会保障協定」の締結に実質的な合意が得られました。
これにより、これまで課題であった、両国間の社会保障制度の二重加入などの問題が解決され、人的交流や経済交流が一層促進されることが期待されています。
社会保障協定とは?
海外で働く場合、その国の社会保障制度に加入する必要がありますが、次のような問題が生じることがあります。
まず、日本から派遣された人が日本と働いている国との両方で、社会保障制度の保険料を支払わなければならないという「保険料の二重負担」の問題です。
さらに、日本や海外の年金を受け取るためには、一定の期間その国の年金制度に加入しなければならないという場合がありますが、滞在期間が短いと、海外で支払った年金保険料が無駄になってしまうという問題も生じます。
このような問題を解決するために、各国は社会保障協定を締結しています。社会保障協定の目的は次の2つです。
まず、「保険料の二重負担」を防止するために、二国間で加入すべき制度を調整します。これにより、日本と働いている国の社会保障制度の保険料を重複して支払うことを防ぎます。
次に、年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を合算します。これにより、必要な年金加入期間を満たしやすくなり、年金を受け取るための条件を達成しやすくなります。