2023年3月末、中小企業を対象とした60時間越の残業割増賃金率の猶予措置が廃止され、4月からは中小企業も大企業と同じように、月60時間を超える時間外労働に対して、50%の割増賃金率が適用されることとなります。
今後は、多くの会社で従業員の労働時間管理がさらに重要になってくるでしょう。
従業員の時間外労働で、よく問題になるケースの1つとして「始業前の就業(いわゆる早出出勤)が時間外労働として認められるかどうか」というものがあります。
すでにご存じの方も多いかと思いますが、所定労働時間外の就業が労働時間として認められるかどうかは、判例上「会社の指揮命令下にあったかどうか」、つまりは「就業が義務付けられ、または余儀なくされていたかどうか」といった基準で判断をします。(三菱重工業長崎造船所事件 最判平成12.3.9労判778-11)
ただし、始業前の就業は終業後と比べて労働時間として認められにくいという特徴があります。
就業後はいったん使用者の指揮命令下に置かれた後の時間であることから、労働の継続について「明示・黙示の指揮命令下にあった」と判断されやすいのに対し、始業前はまだ使用者の指揮命令下に入っていないため、命令下の就業と判断されにくいためです。
とはいえ、会社側が労働者に対して、例えば始業前30分には会社に到着するよう指示し、所定の場所から離れることを許していない等の事情があれば、それは指揮監督下の就業として、労働時間として認められる可能性が高くなります。(東京地判平22.2.2労判1005-60)
人事・労務の担当者としては、始業前と就業後の労働時間制の違いに注意したうえで、会社のルール作りが必要となります。