人材戦略を支える福利厚生 ⑤「共済会の活用~ライフコースの多様化と事業の再構築~」

可児先生

「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第5回です。
福利厚生を人材戦略を支える施策と位置づけ、経営の視点から福利厚生を見直し活用していこうという連載です。

可児先生

私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役可児俊信です。

サト

私がお相手をつとめますサトです。
よろしくお願いいたします。

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<お問合せ>
ハタラクエール実行委員会事務局(株式会社労務研究所)
info@fukurikosei-hyosyo.com
www.fukurikosei-hyosyo.com

目次

共済会のプレゼンスの低下

可児先生

今日は、共済会の活用についてです。
さっそくですが、勤務先には共済会はありますか?

サト

共済会って言葉は知っていますが…
ええー、勤務先にはあったかな?

可児先生

こういう社員が多いです。
これが今日、共済会を取り上げた理由です。

今、社員からみて、プレゼンス、存在感が薄れている共済会があります。
その原因をさぐるとともに、人材戦略に共済会を活用する方法を考えていきます。

共済会とは、従業員の福利厚生を目的に、会社・団体等が従業員のために設立する非営利組織のことです。
会員同士で助け合う「相互扶助」の精神に基づき、企業だけでなく従業員も会員となり、お金を出し合い運営する仕組みです。

共済会は、会員へのサービスが充実しており、主に、結婚の際や、病気やケガ、死亡などに対する補償等を低掛金で受けることができます。
また、従業員自身が運営に関わっていることから、福利厚生への参加意識を持たせることができるのもメリットです。
一方で、営利組織ではないため、保険会社などに比べると提供しているサービスのラインナップが少ない、といったデメリットもあります。

共済会に対する社員の関心が薄くなると、共済会事業もなかなか見直しがされません。
そうなると共済会が社員のニーズを反映しない恐れがあります。

また共済会の財政が悪化しても、誰も指摘せず、見直しが先送りされる事例もあります。

サト

共済会って、結婚とか、入院とか、身内が亡くなったとか、
そんな時には存在感がありますが。

共済会は従業員も会員として会費を負担しています。
言葉を換えれば、福利厚生費を一部従業員が負担してくれ、会社にとってはコスト軽減に繋がっているということです。
もし共済会を廃止して不利益変更を避けるため共済会事業を会社が引き継いだらコスト増になります。

ですから、共済会は廃止するのではなく、環境変化と従業員ニーズに沿った事業内容に見直し、プレゼンスも引き上げる、これが最善と考えます。

慶弔給付の見直し

サト

そういえばうちの共済会は社員会という名前でした。

可児先生

共済会は一般的な名称です。
会社によって、親睦会、社員会、福祉会、互助会とか、
社名を取って○○会とか名付けられています。

可児先生

また、市役所にもあり、職員互助会という名称です。

共済会の運営形態は図表1のように、労使の費用負担でなりたっています。
その一般的な事業内容は図表2です。

共済会は相互扶助、会員間の助け合いが基本です。具体的には慶弔給付と貸付です。
共済会は日本に社会保障がなかった戦前が発祥です。
病気やケガの医療費、休業時の所得補償、退職時の一時金等を支給するのが目的でした。

貸付も、個人がなかなか金融機関から借り入れできなかった時代からあるものです。
今でも社員のセーフィティネットとしての役割を果たしています。

サト

私の周りでは、結婚していなくて共済会から結婚祝金、
出産祝金、入学祝金を貰えないという人もいます。

可児先生

共済会事業、特に特に慶弔給付は、
結婚して家族をもって、一つの会社に定年まで勤めて……とか、
特定のライフコースを前提にしていることが多いです。

図表3に示すように未婚率は上昇しており、ライフコースは多様化しています。
特に男性の生涯未婚率は上昇しています。働く従業員の属性や価値観が様々になるなか、慶弔給付を不公平と感じる会員は一定数いると思います。

よって、共済会は存続させ,従業員から会費を受け入れ続ける一方で、慶弔給付を縮小の方向で見直し、新しい事業を再構築しているのが良いと思います。

サト

「慶弔給付は時代遅れ」とみなし、共済会を廃止するのは早計ですね。

可児先生

慶弔給付はセーフティネットの役割を担っています。
むしろ、結婚、出産、入学といった慶事給付を見直し、
会員間の公平性を高めるのが良いです。

自助支援事業の拡大

サト

では、相互扶助の事業を縮小して、代わりに何を始めますか?

可児先生

先程の図表2に記載している自助支援事業です。

相互扶助は何かライフイベントが発生したら給付されます。その意味では事後給付です。
それに対して自助支援は会員である従業員が何かしようとする際に共済会が支援します。

その意味で自助支援は事前給付です。
自己啓発したい、旅行で見聞を広めたい、人間ドック受診したいという会員の意欲に対して、実行前に支援します。受け身ではなく能動的です。
今の職場では、会社からの指示で動くのではなく、自分で考える自律性が求められています。そういう人事にもあっています。

特にキャリア開発は、会社からのお仕着せではなく自分で考えるよう会社から求められるようになっています。

サト

具体的にどのように支援するのですか?

何に対して支援するかということと、どのように支援するかがあります。
どのように支援するかは、大きく分けて2つあり、一つは共済会から補助金を支給して、会員の費用負担を軽減させる方法、もう一つは共済会が契約者となって法人契約のサービスを導入し、会員は割安な価格で利用できるようにするものがあります。
具体的にはフィットネスクラブの法人契約、ホテルチェーンの法人割引、福利厚生パッケージの契約、相談サービスの契約も考えられます。

補助はボランティア活動への補助、自己啓発への補助、不妊治療費への補助,宿泊補助などが考えられます。

サト

法人契約割割引と補助金はどう使い分けますか?

法人契約は契約時または年間で所定のコストはかかりますが、利用者が増えてもコストは増えないものが多いです。
また法人契約は、市中に存在しているサービスが大前提です。
つまり、宿泊・旅行、スポーツ等の一般的なサービスで、多くの会員の利用が見込めるものが法人契約に適しています。

それに対して補助金は、どんなものにも補助できますので、法人契約では扱っていないものも対象にできます。
その一方で、利用者の負担が増えるので、あまり多くの会員の利用が見込めるサービスには適していません。必要な範囲に限定しましょう。
また、補助金支給事務も発生しますので、あまり頻度の高いものは避けましょう。

サト

例えばですが、宿泊は補助金よりも法人割引が望ましい、
という感じでしょうか?

可児先生

そうです。
慶事給付を見直して、自助支援を強化し、従業員の多様なニーズに応え自立性を高めることで、共済会を再度活用しましょう。

『共済事業交流会』参画のご案内

筆者が代表を務める株式会社労務研究所では、福利厚生環境の変化、従業員の多様化の中で、今後の共済会の在り方を考えようとの目的で、共済会事業交流会を創設し、運営しています。

<共済事業交流会の全体の流れ>

  1. 参加共済会は会場に集まっていただきます。リモート参加も可能です。
  2. 持ち回りで各共済会による事業内容の報告をいただきます。
    皆様、普段は聞けない他社の共済事業についての報告をメモを取りながら真剣に聞いていらっしゃいます。
  3. 報告に対する質疑応答に移ります。
    途切れることなく質疑応答がなされ、自共済会の状況と照らし合わせながら、時間ギリギリまで質疑応答を行われます。
  4. 懇親会を毎回開催します。熱心に情報交換をされています。
ご参加要項
開催頻度:年6回開催
年会費:66,000円
持ち回りで自共済会の事業内容の報告をお願いします。

<お申込方法などのお問合せ>
株式会社労務研究所 可児俊信:t.kani@rouken.com

執筆者情報

株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏

公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから

1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。

◎略歴

1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る

◎著書

「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)


人事・労務でお悩みなら是非ご相談ください

私たちは、クライアント数5500社・従業員数880名を超える業界最大級の社労士事務所です。SATO-GROUPでは、従業員数5万人を超える大企業から、個人事業主の方まで幅広いニーズにお応えしております。全国に6か所の拠点を設置し、日本全国どこでも対応が可能です。社会保険アウトソーシング・給与計算・労務相談・助成金相談・就業規則や36協定の整備など、人事・労務管理の業務をトータルサポート致します。

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