就職活動中の学生に対するハラスメント(就活ハラスメント)は、企業の採用担当者が学生に対して不適切な発言や行為をすることで、学生の人格や尊厳を傷つけるものです。就活ハラスメントには、セクシャルハラスメント(セクハラ)だけでなく、パワーハラスメント(パワハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)などが含まれます。
厚生労働省では、就活ハラスメントの防止対策を強化するために、2022年3月より、各労働局 雇用機会均等課において、学生に対する2つの新しい取組みを開始しました。また、企業に対しても、就活セクシャルハラスメント対策を講じることが義務付けられました。この記事では、就活ハラスメントについて、企業が知っておくべき内容を解説します。
厚生労働省の労働局雇用機会均等課における取組
大学生に対する出前講座の実施
希望のあった大学等に、雇用機会均等課の職員が派遣され、出前講座(就活ハラスメント防止対策関係セミナー)が開催されます。
講座では、就活中にハラスメントに遭わないために気をつけることや、もしハラスメントに遭ったときはどうすればよいかなどを、法令や対応のポイント、相談先などとともに解説します。出前講座はオンラインでも受けられます。
就活ハラスメントの被害にあった学生へのヒアリングの実施
学生から相談があった場合は、非公表でヒアリングします。
ヒアリング結果は、今後の行政における相談対応や企業指導に活用されます。また、学生からの悩みや希望を把握することで、就活ハラスメント防止対策の改善にも役立てられます。
就活セクシャルハラスメント対策
職場におけるセクハラ防止対策については、「男女雇用機会均等法」と「セクハラ防止指針」により、次のような措置をとることが事業主に義務付けられています。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
ただし、従来これらの規定は、雇用されている従業員を対象としたもので、就活生は対象とされていませんでした。
しかし、学生から寄せられる相談の中には、OB訪問や面接で深刻な性的いやがらせを受けた事例もあるとされています。また、WEB面接の一対一の対面でも、他の目が無いことにより、就活ハラスメントにつながる危険が指摘されています。
そこで、このような事情を背景として、就活生等について、次のような規定が盛り込まれました。
就活ハラスメント全般への対策が必要
企業側の担当者としては悪意が無くとも、不適切な発言や行為により、学生からの相談を経て、企業側へ行政指導がある可能性もあるので注意しましょう。
セクハラ防止指針で規定されているのは、就活セクハラに関するものだけですが、就活セクハラだけでなく、就活パワハラや就活モラハラも問題となっています。例えば、
- 学生の志望動機や能力を否定したり、落ち込ませたりすること
- 学生に対して過度な時間や頻度で連絡を取ったり、返信を求めたりすること
- 学生に対して不必要な条件や期限を設定したり、圧力をかけたりすること
これらの行為も、学生の人格や尊厳を傷つけるものです。企業は、就活ハラスメント全般に対して、予防策や対応策を講じることが望まれます。
(参考:就職活動中の学生等に対するハラスメント防止対策を強化します!|厚生労働省|就活ハラスメント (mhlw.go.jp))