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【令和5年4月】雇用保険料率が引き上げられます

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令和4年12月14日、厚生労働省は、雇用保険料率(※以下料率はすべて、一般事業の料率を記載しております)を現行の1.35%から1.55%に、0.2%引上げる見通しであることを明らかにしました。
具体的な引上げ時期については、令和5年4月から新しい雇用保険料率が適用される予定です。

 雇用保険料率は令和4年10月の引上げにより、労使合計1.35%となったのは既にご存かと思います。
すでに昨年引上げが実施された雇用保険料率ですが、令和5年にも再度雇用保険料率の引上げが実施される背景とはなんでしょうか。

雇用保険料率引き上げの背景

令和5年4月に予定されている引上げに伴い増加する財源は、新型コロナウイルス感染症の長期化により雇用調整助成金や失業手当の給付が急増したため、雇用保険料の積立金に使用されると考えられています。

雇用保険の給付は、その利用目的により料率が細分化さております。
皆様より徴収された雇用保険料は「失業給付」「育児休業給付」「雇用保険二事業」の3つに区分されており、「雇用保険二事業」のみ事業主が0.35%負担しております。
なお、雇用調整助成金の財源は「雇用保険二事業」から拠出されております。

現状、労使がともに負担している部分は「失業給付」を0.3%ずつ、「育児休業給付」を0.2%ずつですが、令和5年4月からの負担率増加は「失業給付」を労使合計で0.8%となることが想定されています。
これにより雇用保険料率が前述の1.55%へと変更となります。

雇用保険料率の推移

ここで一般の事業に絞って過去の雇用保険料率の推移を見てみましょう。

年度\期間労働者負担事業主負担雇用保険料率
(労使合計)
平成25年度~平成27年度0.50.851.35
平成28年度0.40.71.1
平成29年度~令和3年度0.30.60.9
令和4年4月1日
~令和4年9月30日
0.30.650.95
令和4年10月1日
~令和5年3月31日
0.50.851.35

このように過去数年の推移をみると、現在の雇用保険料率が高いわけではなく、むしろ過去の水準へ戻っているのがお分かりいただけるでしょうか。
しかしながら雇用保険料率の変動の理由は以前とは異なっているように思われます。

平成25年頃から新型コロナウイルス感染症の流行以前までは、東日本大震災の影響を大きく受けた東北3県での失業給付の支給や緊急雇用創出事業の取組はあったものの、日本経済全体の回復基調となっていました。
その流れに合わせるように雇用保険料率は一度低下し、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う失業者増加、雇用調整助成金の延長等により異例となる1年に2回の雇用保険料率の改定を経て、令和5年度から再度の過去の水準を上回る料率へ改定となる予定です。

景気が変わると雇用状況が変わり、失業給付額が変動し、雇用保険料率の変更となる為、 景気動向が雇用保険料率を変える指標の一つと言えます。

雇用保険料率変更に伴う注意点

雇用保険料率変更に伴う注意点として、労働保険の年度更新があります。
雇用保険料率の引上げが正式決定となった場合、令和5年度の年度更新の際は概算保険料の申告と納付を新しい保険料率によって行う必要があります。
正規雇用者や安定した長期雇用者の減少が、短期・短時間の非正規労働者の増加に繋がり、失業給付等に関わる雇用保険料の積立金の減少が顕著となれば、結果として更なる雇用保険料率の引上げが起こる可能性も今後十分に考えられます。

今後の雇用保険料率の推移に注目していきましょう。

社会保険の適用拡大

従業員の安心を支える社会保険には、厚生年金保険健康保険などがあります。
現状、従業員数101人以上の企業では正社員だけでなく、一定の要件を満たすパートやアルバイトなどの短時間労働者についても社会保険の加入が義務となっています。

この社会保険の適用は段階的に拡大されており、今まで501人以上の事業所が適用となっておりましたが、令和4年(2022年)10月より、従業員数101人以上500人以下の企業についても一部のパートやアルバイトの方の社会保険加入が義務化となっています。

令和4年(2022年)10月からの改正

令和4年10月より、以下2点の要件が改正されました。

  • 適用事業所の要件:被保険者の総数が常時100人を超える事業所
  • 短時間労働者の要件:雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること

改正により、現在国民年金・国民健康保険に加入している方、配偶者の扶養の範囲内で働いている方が社会保険へ加入となる可能性があります。
また、令和6年(2024年)10月からは、特定適用事業所の要件について、被保険者の総数が常時50人を超える事業所が対象となる為、該当する場合は加入対象者の把握や対象者への説明が必要となってきます。

適用要件早見表

要件\施行年月2016年10月~2022年10月~2024年10月~
事業所規模被保険者の総数が
常時500人超
被保険者の総数が
常時100人超
被保険者の総数が
常時50人超
労働時間週の所定労働時間
20時間以上
変更なし変更なし
賃金月額88,000円以上変更なし変更なし
勤務時間継続して1年以上
使用される見込み
継続して2ヶ月を超えて
使用される見込み
変更なし
適用除外学生変更なし変更なし

社会保険適用拡大の目的とメリット

社会保険の適用拡大を行うことで、厚生年金保険・健康保険の適用要件を緩和し、より多くの人が加入できるようになります。
今まで被用者でありながら適用とならなかった方に対し、厚生年金保険や健康保険による保障の仕組みを確保することで、被用者にふさわしい保障を実現できると言えます。

また、労働者の働き方や企業による雇い方の選択において、社会保障制度における取り扱いによって選択を歪められたり、不公平を生じたりすることがないように、働き方や雇用の選択を歪めない柔軟な制度を構築することができます。

社会保険に加入するメリットとしては、年金が国民年金と厚生年金の2階建てとなり、老後・障害・死亡の3つの担保が充実することが挙げられます。
健康保険についても、受給要件に該当した場合、病休期間中や産休期間中に給与の3分の2相当を受給できる、傷病手当金や出産手当金の受給が可能となり、手厚い保障を受けることができます。

社会保険に加入をすることで労働者に対するメリットが増え、保障が充実することを企業側は十分理解したうえで、労働者に説明し加入を促すとともに、多様化する時代に合った仕組みづくりを進めていくことが必要だと言えます。

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