再就職援助計画とは?提出に必要な資料等解説します

事業主は、事業規模の縮小により相当数の労働者が離職を余儀なくされるときは、「再就職援助計画」を作成し、公共職業安定所長の認定を受けなければならない

事業主は、地域の労働力需給に影響を与えるような大量の雇用変動の前に、離職者の数を「大量離職届・大量離職通知書」として公共職業安定所へ届け出なければならない

これは、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第24条、27条に記載されています。

事業主にとって、事業の縮小、事業転換、廃止はどんな企業にも起こりえる出来事です。

特に1つの事業所において、1か月以内の期間に、30人以上の離職者の発生が見込まれるとき、「再就職援助計画」を作成してハローワークの認定を受けるか、「大量離職届・大量離職通知書」をハローワークに提出するかは、目的が全く違います。

「大量離職届・大量離職通知書」は職業安定機関等が地域の大量雇用変動に対して迅速かつ的確に対応を行えるようにするため、「再就職援助計画」は事業主が離職する従業員に対して行うべき再就職活動の援助の責務を果たすために提出するものです。

帝国データバンクによると、2022年は新型コロナウイルスによる影響を受け6376社が倒産しました。
企業を取り巻くリスクが多様化している今、倒産を避けるため、やむを得ない事情で従業員を解雇することはいつでも起こりうるといえるでしょう。

「再就職援助計画」は離職する対象者の再就職を後押しし、早期再就職につながる可能性のあるものであり、雇い止めを行うことになった事業主が最後まで責任をもって作成するべき書類です。

そこで今回は、「再就職援助計画」の提出先や必要な資料について、詳しく解説していこうと思います。

目次

「再就職援助計画」とは

再就職援助計画とは、離職する対象者の再就職活動に対しての支援のため、雇い止めをする事業主側が作成するものです。再就職援助計画は、管轄のハローワーク(公共職業安定所長)に提出して認定を受ける必要があります。

再就職援助計画の提出に必要な資料

再就職援助計画(様式第1号)

最初の離職者の生じる日の1か月前までに、次の項目について記入し、提出する必要があります。

再就職援助計画(様式第1号)
  • 事業の現状
    申請する日における「再就職援助計画」を作成する事務所を含む申請事業主のすべての事務所数を記載します。
  • 再就職援助計画作成に至る経緯
    縮小、転換、廃止の内容やそこに至った理由について記載します。
  • 計画対象、労働者の氏名
    離職する対象者の人数と氏名、期間を記載します。
  • 再就職援助のための措置
    離職する対象者へ行う支援の内容を記載します。
  • 労働組合等の意見
    作成にあたっては労働組合等の意見を聴くことが必要です。
    同意の有無を確認しましょう。

事業規模の縮小等に関する資料(様式第1号 別紙1-1)

こちらの添付書類については、大事業主、中小事業主、業種によって書く内容が大幅に違います。

事業規模の縮小等に関する資料(様式第1号 別紙1-1)
  • 事業主規模
    大事業主か中小事業主かいずれか当てはまる方に〇を付けます。
  • 事業規模の縮小等を行う理由
    事業の縮小を行う理由について記載します。事業所の事業を取り巻く現状や売上高等、背景となった出来事を詳細に記入する必要があります。(理由が新型コロナウイルスの影響によるものであれば、その旨を記載しましょう)
  • 事業規模の縮小等を行おうとする期間
    事業規模の縮小の予定の期間を記載します。

事業規模の縮小等の内容

下記内容の当てはまる箇所を具体的に記載してください。

「事業規模の縮小」

縮小する部門等の名称、事業内容、設備の廃棄、譲渡等の事業規模の縮小の内容

「事業活動の縮小」

縮小する部門等の名称、事業内容、事業の休止の内容

「事業活動の転換」

縮小する部門等の名称、事業内容、新たに開始、拡充しようとする事業の内容

「事業の廃止」

廃止する事業内容

労働移動支援助成金の特例対象者に該当することの確認書 (様式第1号 別紙1-2)

「大量離職届・大量離職通知書」を提出するだけでは、助成金の受給はできません。

「再就職支援計画」を提出することにより、離職者にも再雇用先事業主にも下記のようなメリットが生じます。別紙1-2は、離職する対象者が「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」の「特例対象者」に該当することを確認するための書類です。

「特例対象者」と認定された対象労働者が、新しい事業所に雇い入れられた場合、「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」の優遇助成が適用されるため、労働者の早期の再就職が促されます。コースについては次の『3.再就職支援を行う事業主への支援策』にて説明しています。

労働移動支援助成金の特例対象者に該当することの確認書 (様式第1号 別紙1-2)

計画対象労働者に関する一覧(添付書類(別紙2))

計画対象労働者に関する一覧(添付書類(別紙2))
  • 再就職援助計画で記載した離職する対象者の総計、その内の雇用保険の被保険者の数、45歳以上70歳未満の対象者の数を、それぞれ記載しましょう。
  • 再就職援助計画で記載した離職する対象者全員について記載しましょう。1枚で足りない場合は、複数枚で作成してください。令和4年12月2日より、前月に支払われた賃金を記載する項目、居住地を記載する項目が追加されました。賃金の欄に関しては本人の同意を得た場合に記載し、居住地は市町村まで記載しましょう。

離職前賃金証明書(様式14号)

離職する対象者の離職日が再就職援助計画の提出日から一定期間が経過し、「再就職援助計画対象労働者証明書」に記載された「離職前賃金」が実際の離職時賃金と異なり、離職する対象者本人が記載事項の更新を希望した場合に提出していただく書類です。

離職する対象者本人もしくはハローワークから「離職前賃金」の更新の依頼があった場合に提出してください。

離職前賃金証明書(様式14号)

再就職支援を行う事業主への支援策

事業主が再就職援助計画を作成した場合は「再就職援助コース」を活用でき、再就職援助計画の対象となる労働者を受け入れた事業主は「早期雇入れ支援コース」を活用できます。

再就職支援コース

再就職支援コースは、離職する従業員に対する再就職支援を行う事業主に対して助成金を支給します。事業規模の縮小、廃止、転換、再編の場合も対象となります。ただし、このコースの助成金を受け取るためには、下記条件があるため、注意しましょう。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
  2. 支給のための審査に協力すること
  3. 申請期間内に申請を行うこと
  4. 人員削減を行う組織において、次の①または②に該当する事業主であること
    • 生産量(額)、販売量(額)または売上高等の事業活動を示す指標が、対前年比 10%以上減少していること
    • 直近の決算における経常利益が赤字であること、または今後3年以内に赤字となる見込みがあること

早期雇入れ支援コース

「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」は、再就職援助計画の対象者を離職してから3か月以内に無期雇用として雇い入れることが確定している事業主に対して助成金を支給します。また、職場外での研修や実務の訓練等を行った事業主に対しては、上乗せで支給します。

まとめ

会社にとって重要な転換点である事業活動の縮小、転換、廃止は、それによって会社を離れることになる対象者の人生にとっても、今後を左右する重要な出来事です。

1つの事業所で1か月に30人以上の離職者を生じさせる場合に適切に対応できるよう、作成の仕方の確認をしておきましょう。


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