令和5年5月8日、新型コロナウイルスの5類感染症引き下げで就業制限はどうなる?

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新型コロナウイルス感染症の5類引き下げによる影響

2023年2月、日本政府は新型コロナウイルス感染症に関して「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」がある状態とは考えられないと判断し、2023年5月8日より、感染症法上の2類相当である「新型インフルエンザ等感染症」に該当せず、季節性インフルエンザと同様の「5類感染症」に引き下げることを決定しました。

これにより関係各所から提示されていたガイドラインも撤廃や改変されることが予定されており、日常生活にも大きな変化が起きることが想定されています。

感染症法の分類と措置の一覧表

上記の表のとおり、就業制限も撤廃されることから、2023年5月8日以降はコロナウイルスにり患していることが判明していたとしても、自覚症状などなく仕事に支障が出ない場合は、会社として就業を禁止するなどはできなくなります。

現在、濃厚接触者で自宅待機となっている方もいるかと思いますが、陽性者自身が上記の取り扱いのため、「コロナウイルスの濃厚接触者」という言葉自体を聞かなくなるのではないでしょうか?

5類引き下げと企業の就業制限

「労働安全衛生法の規定」と就業制限

労働安全衛生法という法律があります。こちらは、労働者の安全と健康確保、快適な職場環境を形成するための法律となり、この内容の一つに「労働者の就業に当たっての措置」があり、第68条には「使用者は、労働者が「伝染性の疾病その他の疾病」に罹患した場合、就業を禁止しなければならない」と明記されています。

  ここで規定されている疾病を、厚生労働省は「伝染させる恐れが著しいと認められる結核にかかっている者」と解釈しています。逆に言うと結核以外の場合において、一概に就業禁止にすることは、この法律を根拠としては出来ません。

「感染症法の規定」と就業制限

感染症法の規定による就業制限では、1類感染症から3類感染症及び新型インフルエンザに分類される感染症に罹患した場合は、就業制限の措置をとる必要があるとされています。新型コロナウイルスもこの規定に該当することになります。

コロナウイルスによる就業規則は休業手当が必要になる可能性

上記「労働安全衛生法」「感染症法」の規定に該当する場合は、法律による事業主の義務としての就業制限となるため、会社の判断による就業禁止ではなく、いわゆる「使用者の責に帰すべき理由による休業」には該当しないため、会社は休業補償の支払いをする必要はありません。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中該当する労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

労働基準法 第26条 休業手当

しかし、2023年5月8日以降の新型コロナウイルスによる就業制限については、従来の就業制限を継続していると、法律上「休業手当」の支払いが必要となりますので注意が必要です。

尚、よくあるトラブルとしてあるのが年次有給休暇の強制・半強制的な利用の推進となります。体調不良の場合に、有給休暇を利用することは日常的であり、よくある事例だとおもいますが、会社が強制することは許されません。有給休暇は、労働者が自由に使える権利となりますので、自主的な使用であれば全く問題ありませんが、会社が直接的又は間接的を問わず強制することは出来ませんので、注意してください。

また、就業規則で感染疾病に罹患した場合に、就業を制限・禁止する規定を設けることは可能です。よく言われる表現ですが、一般的には労働者には「就労請求権」はありませんので、就業規則を根拠として就労を制限することは可能です。ただし、その就業制限と労働基準法26条に基づく休業手当の支払いは全く別ですので、法律で就業制限がされていない以上は、休業手当の支払いが会社の義務として発生することは理解しておかなければなりません。

会社の労務相談はSATO社労士法人まで

新型コロナウイルスの分類が引き下げられたことにより、経営者や担当者の皆さんは、会社の対応をどうすればいいか、迷いが生じるかもしれません。

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まとめ

2020年以降、新型コロナウイルスによる日常生活だけでなく、会社における就業環境も大きく変わりました。そしてすでに3年が経過し、現在2023年となっています。その間にテレワークなどの新しい働き方も推進され、在宅勤務に合わせてクラウドシステムも大きく普及しました。また、コロナ陽性者や濃厚接触者の出社制限時のBCP対策などもすすみました。そして今回2023年5月に、また大きな節目を迎えようとしています。

3年間、試行錯誤の上積み重ねてきた制度をいきなり変更するのは、従業員の心理的な側面からも難しい問題が生じることが想定されますので、今回の感染症分類5類への変更に伴う影響をきちんと把握し、就業規則なども活用しながら社内及び働く従業員に周知していく必要があります。

特に会社の経営者、人事部は、従業員の理解と協力をしっかり得ながら新しい就業環境の構築に取り組んでいかなければ、多大な損失を被ることもありますので、しっかりと制度を理解し、世情の変化にもアンテナを立て、時には専門家の力も借りてリスクを回避いただき、ご自身のビジネスを発展していっていただければと思います。


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